カクテルの基礎知識 


■はじめに

一般にカクテル(cocktail)とは数種類の酒、果汁、薬味等を混ぜ合わせた飲料を意味しているが、カクテルとしての定義としてはその中でもロング・ドリンクとショート・ドリンクに分類できます。これは短時間で飲むかゆっくり時間をかけて飲むかによってその性格は変わっていきます。
ショート・ドリンクは主として氷で冷やし、カクテルグラスなど脚のついたグラスに注がれ、あまり時間をかけずに飲むものであり、それに対しロング・ドリンクはコリンズグラスやタンブラーなどの大型グラスで作られ、氷や熱湯、ホットミルク等を注いで時間をかけて飲むのが通例です。
■カクテルの技法

カクテルの技法については主に次のように大別されます。
  • シェイク
    シェーカーをの中に各種スピリッツその他材料を入れ、シェイキングすることによって作るスタイル。

  • ステア
    タンブラーやオールドファッションドグラスに材料を注ぎ、グラスの中で静かにかき混ぜて作るスタイル。

  • ビルド
    複数のリキュールを順番にそれぞれが混ざり合わないように、ティースプーン等を使って静かに重なり合わせて作っていくスタイル。プースカフェスタイルとも言う。
■ロング・ドリンクの分類

ロング・ドリンクの種類としては次のものがあげられます。
  • BUCK(バック)
    各種のスピリッツにレモンジュースとジンジャーエールを加えてつくられたもの。

  • COBBLER(コブラー)
    ゴブレットやワイングラスに氷を詰め、スピリッツやワイン、リキュールや砂糖を注ぎ、十分にステアして季節のフルーツ、ミントの葉などを飾り、ストローを添えてつくられたもの。コブラーは柑橘類のジュースを殆ど使わないのが普通。

  • COLLINS(コリンズ)
    ジンをはじめウィスキー、ラム、ウォッカなどのスピリッツにレモンジュースと砂糖あるいはシュガーシロップを加え、ソーダ水を満たしてつくられる。

  • COOLER(クーラー)
    スピリッツにレモンやライムのジュースと甘味を加え、ソーダ水やジンジャーエールなどを満たしてつくられる。

  • CRUSTA(クラスタ)
    主にブランデーをベースにし、レモンジュース、ビターズ、砂糖などをシェイクして砂糖のスノースタイルにし、らせん状にむいたレモンまたはオレンジピールをはめ込んだワイングラスに注ぎ、フルーツを飾ったスタイル。

  • CUP(カップ)
    ワイン、スピリッツなどをベースに各種リキュール、フルーツやジュースなどをウォータージョッキの中で加えてつくる。パンチカップやタンブラーで飲む。

  • DAISY(デイジー)
    種のスピリッツに柑橘類のジュース、フルーツシロップまたはリキュールを加え、ゴブレットや大型ワイングラスにクラッシュドアイスを詰め季節のフルーツを飾り、ストローを添えてつくられる。

  • EGG NOGG(エッグノッグ)
    卵、牛乳、砂糖に各種アルコール類を混ぜてつくられたもの。ノンアルコールのものもある。またホットで飲む場合とコールドで飲む場合がある。

  • FIX(フィックス)
    スピリッツに柑橘類のジュース、フルーツシロップあるいはリjキュールを加えたサワー系のミックスドリンクで、ゴブレット、またはタンブラーにクラッシュドアイスを詰め、季節のフルーツを飾りストローを添えてつくられる。

  • FIZZ(フィズ)
    ジンなどのスピリッツにレモンジュース、砂糖を加えてシェイクし、タンブラーに注いでソーダ水を満たしてつくる。

  • FLIP(フリップ)
    ワインやスピリッツに卵と砂糖を加えてシェイクし、サワーグラスまたはワイングラスに注いでナツメグをふりかけてつくられる。

  • FLOAT(フロート)
    酒の比重の違いを利用し、一つの酒の上に別の酒や生クリームを混ざらないように浮かべてつくられる。

  • FRAPPE(フラッペ)
    材料をクラッシュドアイスと共にシェイクして氷も一緒にグラスに注ぐか、カクテルグラスやソーサー型シャンパングラスにクラッシュドアイスを盛り、その上から直接リキュールなどを注ぎ、短いストローを添えてつくられる。

  • FROZEN STYLE(フローズン・スタイル)
    材料をクラッシュドアイスと共にミキサー(バーブレンダー)でブレンドし、シャーベット状にしてつくられる。

  • HALF AND HALF(ハーフ・アンド・ハーフ)
    二種類の材料を半分づつミックスしてつくられる。

  • JULEP(ジュレップ)
    各種スピリッツやワインをクラッシュドアイスの詰められた大型グラスに注ぎ、グラスの表面に霜がつくまで充分にステアしてつくられる。アメリカ南部に古くから伝わるさわやかなミックスドリンクスタイル。

  • MIST(ミスト)
    ウィスキー、ブランデーなどのスピリッツをシェイクして、氷も一緒にオールドファッションドグラスに注ぎ入れてつくられる。またクラッシュドアイスをいっぱいに詰めたオールドファッションドグラスに材料を直接注ぐ方法もある。

  • ON THE ROCKS(オン・ザ・ロックス)
    大き目の氷を入れたオールドファッションドグラスに材料を注いでつくるスタイル。最近のアメリカではオーバーロックス(OVER ROCKS)またはオーバーアイス(OVER ICE)、略してオーバーと呼ばれるようになってきた。

  • POUSSE-CAFE(プースカフェ)
    数種類のスピリッツやリキュール、生クリームなどを比重の大きいものから順に混ざり合わないように積み重ねてつくられる。

  • PUNCH(パンチ)
    ワイン、スピリッツなどをベースに各種リキュール、フルーツやジュースなどを加えてつくられる。

  • RICKEY(リッキー)
    スピリッツに新鮮なライムまたはレモンの実を絞り、ソーダ水を満たしてつくられる。基本的には砂糖、シロップの類は使わない。

  • SANGAREE(サンガリー)
    赤ワインに甘味を加え、水または熱湯を満たしてつくられる。

  • SLING(スリング)
    スピリッツにレモンジュースと甘味を加え、水またはソーダ水、ジンジャーエールなどを満たしてつくられる。ホットスタイルもある。

  • SMASH(スマッシュ)
    ジュレップを小型にしたもの。

  • MOJITO(モジート)
    スマッシュにレモンまたはライムジュースを加えたミックスドリンク。

  • SWIZZLE(スウィズル)
    タンブラーにラムなどのスピリッツ、ライムまたはレモンジュース、砂糖、ビターズなどを注ぎ、氷を加えてスウィズルスティックでグラスの外側に霜がつくまで素早くかき混ぜてつくられる。

  • TODDY(トディー)
    タンブラーもしくはオールドファッションドグラスに砂糖を入れスピリッツを注ぎ、水または熱湯を満たしてつくる。

  • ZOOM(ズーム)
    スピリッツに蜂蜜と生クリームなどを加えてシェイクしたもの。
■T.P.O

基本的にカクテルには飲む時間、場所、目的によって数種類に分類することができます。以下にその分類を説明します。
  • APERITIF(アペリティフ)
    アペリティフの意味は「食前酒」という意味のフランス語で、英語ではAPPETIZER(アペタイザー)という。喉をうるおし、食欲増進のために飲まれる。代表的なアペリティフとしてはマティーニなどが有名だが、その種類はさまざまである。一般的には甘味の少ない辛口のものが多い。またアペリティフはPre-Dinner Cocktail(プレディナーカクテル)とも言われる。

  • CLUB COCKTAIL(クラブ・カクテル)
    ディナーで前菜やスープの変わりに出されるカクテル。料理の味を引き立てさせる目的で飲まれる。

  • DIGESTIF(ディジェスティフ)
    フランス語で食後酒を意味する。英語ではAfter Dinner Cocktail(アフターディナーカクテル)という。食後の口直しや硝化促進の目的で飲まれる。基本的に甘口のものが多い。代表的なディジェスティフとしてはアレキサンダーなどが挙げられる。

  • SUPPER COCKTAIL(サパー・カクテル)
    夜遅くなってから飲まれるカクテル。アルコール度数は比較的高く辛口なのが特徴。

  • NIGHT CAP COCKTAIL(ナイトキャップ・カクテル)
    就寝前に飲むカクテル。濃厚な味付けのものが多く、エッグノッグの類がその代表選手。

  • CHAMPAGNE COCKTAIL(シャンパン・カクテル)
    様々な祝宴の場で飲まれる、シャンパンを使ったカクテル。

  • REVIVER(リバイバー)
    いわゆる「迎え酒」のこと。ノンアルコールのものもある。

  • ALL DAY COCKTAIL(オールデイ・カクテル)
    いつ飲んでもかまわないカクテルのこと。
■グラスの種類

カクテルで用いられるグラスは底の平らなグラスと脚(ステム)のついたグラスの二種類に大別できます。以下にグラスの種類を説明します。
平底型グラス
  • WISKY GLASS(ウィスキー・グラス)
    ウィスキーなどをストレートで飲むためのグラス。ストレートグラス、ショットグラスとも言う。サイズも30mlのシングル、60mlのダブルがある。

  • OLD FASHIONED GLASS(オールド・ファッションド・グラス)
    ウィスキーやカクテルをオンザロックスタイルで飲むときに使われるグラス。日本ではロック・グラスとも言う。容量は180〜300ml程度。

  • TUMBLER(タンブラー)
    ハイボール・グラスとも言い、ハイボールやジン・トニックなどのロングドリンク、ソフトドリンクなどに広く使われている。日本では8オンス・タンブラー(240ml)がもっともポピュラー。

  • COLLINS GLASS(コリンズ・グラス)
    円筒形で背の高いグラス。口径はタンブラーと比べて小さめ。口径が小さいので炭酸ガス系のカクテルと相性が非常に良い。容量は300〜360ml程度。

  • JUG(ジョッキ)
    取っ手のついた平底グラス。小型のジョッキはパンチカップとしても使われる。

  • PUNCH CUP(パンチ・カップ)
    パンチボウルでつくったパンチを注ぎ分ける取っ手付きの平底グラス。

脚付きグラス
  • LIQUEUR GLASS(リキュール・グラス)
    リキュールをストレートで飲むためのグラス。容量は30〜45mlぐらいのものが一般的。

  • SHERRY GLASS(シェリー・グラス)
    ワイングラスより一回り小さいシェリーを飲むためのグラス。ウィスキーやスピリッツをストレートで香味をじっくり味わって飲む場合にも使われる。容量は60〜75ml程度。

  • SOUR GLASS(サワー・グラス)
    サワースタイルのカクテルを飲むためのグラス。容量は60〜75ml程度。

  • COCKTAIL GLASS(カクテル・グラス)
    ショートドリンクのカクテルを飲むためのグラス。逆三角形や優雅な曲線の半球状をしているが、近年、種類は豊富になってきた。容量も90ml程度のものを基準として60〜150mlと大きさもさまざま。

  • CHAMPAGNE GLASS(シャンパン・グラス)
    二種類あり、口径の広いソーサー型シャンパングラスと、口径が狭く細身で背の高いフルート型シャンパングラスがある。純粋にシャンパンを楽しむのなら口径が小さく、炭酸の逃げが少ないフルート型を選ぶ。ソーサー型は乾杯などで素早く飲むときやシャンパンとは別にフローズンスタイルのカクテルなどを飲むときに重宝する。

  • WINE GLASS(ワイン・グラス)
    種類の豊富なグラスで赤ワイン、白ワインなどその種類によってもデザイン、大きさが変化する。一般的には無地無色透明でガラスが薄く、グラスの縁がやや内側にカーブして、口径が6.5cm以上(飲むときに鼻が入り、ワインの香りが楽しめるようになっている)のものが理想的。

  • GOBLET(ゴブレット)
    ビール、ソフトドリンク、氷を入れたロングドリンクを飲むときに使われる。容量も300ml〜と大きめのサイズ。

  • BRANDY GLASS(ブランデー・グラス)
    チューリップ型の大型グラスで、上部がすぼまっている(上部に香りが集まるようになっている)。
■カクテル作成時に使われる単位

  • 1drop(1ドロップ)
    約0.2ml(ビターズ・ボトルを逆さにして自然に滴り落ちる量)

  • 1dash(1ダッシュ)
    約1ml(ビターズ・ボトルを一振りした時の量)

  • 1tsp.(1ティースプーン)
    約5ml(tsp.はティースプーン、茶さじの意味)

  • 1oz(1オンス)
    約30ml

  • 1jigger(1ジガー)
    <米>1.5oz(約45ml)、<英>2oz(約60ml)

  • 1glass(1グラス)
    約60ml

  • 1cup(1カップ)
    200ml

  • 1bottle(1ボトル)
    750ml